二重価格は「外国人料金」ではなく「住民料金」で|姫路城と京都市バスから考える
姫路城は2026年3月から、姫路市民1,000円、市民以外2,500円になりました。二重価格は国籍ではなく住所で分けるべきです。その理由を、姫路城と京都市バスの例から考えます。

2024年6月、姫路市の清元秀泰市長は国際会議の場で、姫路城の入城料について「外国人は30ドル、市民は5ドルくらいにしたい」という趣旨の発言をしました。この発言は「外国人から多く取る」構想として国内外に広まりました。
実際に姫路市が導入したのは、最初の発言よりも良い仕組みでした。2026年3月1日から、姫路城の入城料は18歳以上で姫路市民1,000円、市民以外2,500円です。東京から来た日本人の家族は2,500円を払い、姫路に住むブラジル出身のエンジニアは1,000円です。18歳未満は、国籍を問わず無料になりました。
国籍から住所へ。この切り替えこそ、ほかの観光地が見習うべき線引きだと考えます。
住民が安くてよい理由
住民の料金を安くする理由は、誰が日本にふさわしいかとは関係ありません。誰がすでに費用を払っているか、という話です。
姫路市民は地方税を納め、城の周辺の道路や、観光客も使う公共サービスを支えています。旅行者が滞在する一日だけではなく、一年を通して混雑と向き合っています。観光客は午後のあいだ城を楽しんで帰ります。石垣や白漆喰、それを守る職人の育成にかかる費用に近い額をその人に求めるのは、罰ではなく適正な価格です。
市民プールや体育館では、市民と市外の人で料金を分けることが以前からよくあります。これは、地方税で施設を支える人とそうでない人を分ける、公平な区別として広く受け入れられています。
国籍で分けるのが誤りである理由
国籍で料金を分けると、こうした理由はすべて成り立たなくなります。
姫路に住む外国人は、日本人の隣人と同じように地方税を納めています。パスポートを理由に観光客料金を求めても、城を誰が支えているかとは関係がありません。国籍や出身だけで人を分けることになります。出入国在留管理庁によると、2025年末の在留外国人数は412万5,395人で、初めて400万人を超えました。この人たちを観光客と同じ料金にすれば、何年住んで税を納めても「お客さん」扱いだと伝えることになります。
運用も難しくなります。窓口では、見た目だけで在留外国人と観光客を区別できません。パスポートの提示を求めるか、顔や言葉で判断するしかなくなります。料金のルールが窓口でのもめごとに変わり、評判の悪化は、増えた収入を簡単に上回りかねません。
住所で分ければ、どちらの問題も避けられます。問うのは「市内に住んでいるか」で、姫路城ではマイナンバーカードや運転免許証など、住所が確認できる公的な身分証で確かめています。混み合う入口での確認には手間もかかりますが、確かめるのは出身ではなく住所です。

結果はどうだったか
最初の1か月は、この制度が狙ったとおりの結果になりました。姫路市が神戸新聞に示したところでは、2026年3月の入城者は前年同期より2割弱減り、料金収入は前年の約2倍になる見込みです。1か月だけでは、どこまでが価格の効果で、どこまでが天候や日の並びなどの影響かはわかりません。それでも、混み合う木造の天守に入る人が減り、維持のための収入が増えるのは、この種の施設に必要な結果です。
京都市は、これをもっと大きな規模で試そうとしています。市バスの運賃を、市民は現在の230円から200円に下げ、市民以外は350〜400円にする案です。マイナンバーカードとひもづけた交通系ICカードで、市民かどうかを自動で判別する仕組みが想定されています。2026年9月時点で、市は国土交通省と最終的な協議を進めており、2027年度中の導入を目指しています。うまくいけば、観光客で市バスに乗りにくいという長年の不満に、禁止ではなく価格で応えることになります。
いちばん強い反論
いちばん強い反論は、城を支えているのは姫路市民だけではない、というものです。姫路城は国宝で世界遺産でもあり、国宝や重要文化財の大規模な修理には国の補助金が使われます。東京の納税者も負担しているわけです。もう一つは、市の境界で線を引くのは恣意的だという反論です。隣の町に住み、姫路で働く人は2,500円を払います。
どちらも正当な指摘で、差をなくす理由ではなく、差を控えめにする理由だと考えます。国の補助でまかなえないもの、つまり毎日の混雑や交通、地域のサービスへの負担を背負っているのは住民です。1,500円の差は、城が市だけのものだと主張せずに、その地域の負担を反映した額です。境界のすぐ外の人が損をするのは、市民プールでも同じです。
広げすぎないこと
注意すべき点もあります。あらゆる観光地が市民以外の料金を上乗せすれば、旅行者はどこでも高く払い、混雑は今の場所に残ったままです。二重価格は、混雑していて維持費もかかる場所に絞るべきです。城や有名な庭園、寺社をめぐる路線バスのような場所です。旅行者すべてにかける税ではなく、混む場所のための道具として使うべきだと考えます。
国籍を問わない負担は、すでにほかにもあります。京都市の宿泊税は泊まる人すべてに、富士山の通行料4,000円は登る人すべてにかかります。
原則は、券売機に書けるほど単純です。住民は、すでに払っているから安い。この線引きは、日本人の観光客にも、外国人の住民にも同じように通用します。だからこそ、守る価値のある二重価格はこの形だけだと考えます。

